私は、理学療法士として現在も介護施設で働いています。最近は、快適衣類開発研究所の活動を通じて、多様な職種の方と交流する機会が増えました。仕事の内容を話すと、大半の方から「大変なお仕事ですね」と言われます。私は、この表現があまり好きではありませんが、ある方から「医療・介護の分野は一般の方には理解しづらく、そんな表現しか出来ないのでは?」とおっしゃって頂き、「そうだったのか!」と納得しました。
皆さまは、「介護」という言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか?「身体が不自由な方を援助(抱き抱えてベッドから起こす、車いすへ乗り移る等)」することをイメージし、「きつい仕事」と感じる方もいます。「排泄や入浴の援助」をすることをイメージし、「衛生的にストレスを感じる仕事」と感じる方もいます。きっと、ネガティブなイメージを抱く方が多いでしょう。現に、「慢性的な人材不足」で非常に忙しく、「夜勤や不規則勤務」もあります。それに加えて、「身体的・精神的負荷」が大きい割に低賃金であるという問題もあり、介護離職に拍車をかけています。
メディアの影響もあり、どうしても「大変」な内容に目が向きがちです。しかし、そんな単純な話ではありません。両親や配偶者等、家族が要介護状態となる、あるいは、自分自身が要介護状態となってはじめて、介護職員の専門的な技術や知識の支えによって介護現場が機能し、要介護者とその家族が安心して生活できることに気づきます。
私が勤務する上で、一番、忘れてはいけないと感じることは、介護を受ける方も、様々なストレスを抱えているという点です。年齢を重ねて身体的、精神的に衰えていくことへの恐怖、排泄や入浴等、プライバシーに関わる援助を受ける事へのストレス、加えて介護施設へ入所している方にとっては、住み慣れた自宅を離れ、ご家族や社会との繋がりが希薄になっていくことが最大の不安とストレスになります。介護を受けることには忍耐が必要です。
だからこそ、介護職員の「プロ」としての振る舞いがとても重要だと考えます。例えばケアを始める時の声の掛け方一つをとっても、対象者の方をしっかりと理解して、その方に合った方法を選択する必要があります。要介護者100人に対して、100通りの方法、工夫、注意点があるのです。スタンダードな方法はあるかもしれませんが、正解はありません。状況に応じた臨機応変な対応が鉄則です。
「介護」は奥深いです。根拠に基づいてケアの方法を選択し、対象者の反応をみて、その方法で本当に合っていたのか評価して、また、次のケアに活かしていく。超多忙な日々の業務の中でも、試行錯誤を繰り返し、皆さん頑張っています。
私は、この研究所の活動を通して、介護の奥深さが、まだ介護に直面していない方々にも伝わることを願っています。