「気持ち」をどう支えるか?

「気持ち」をどう支えるか?

「最近は、毎日が楽しくないとか、生きていても意味がないといった悲観的な言葉が減り、笑顔が増えてきました。何気ない会話や冗談を言い合うこともあります。お義母さんと話をする時間が楽しいです。その結果、私も気分的にとても楽になりました。トイレに行くときも自分で頑張ろうとしてくれます。」

 先日、私が勤務する介護施設の利用者さん(90歳台の女性)のご家族とお話する機会がありました。利用者さんにとって長男の妻、つまり「お嫁さん」です。

利用者さん(仮にAさんとします)は、元々、社交的な性格の方です。ご友人も多く、Aさんが運転する車で日帰り旅行へ出かけたり、お茶や生け花の教室へ通ったりと、充実した生活を送っていました。しかし、現在は車いすが必要となり、お嫁さんの介護を受けながらご自宅で生活されています。生活様式が一変し、「元気な頃の自由な生活」と、「介護を受けながらの生活」を比較して、どうしても前向きな気持ちになれないことがあるようです。そんな日は、お嫁さんに対して弱気な発言が多くなっていましたが、最近、少し様子が変わってきた、と嬉しそうに教えて下さったのです。

「介護」という言葉を聞くと、日常生活の援助や身体ケアを思い浮かべることが多いと思います。確かに、これらのケアも大変ですが、お手洗いを済ませる、入浴で身体をきれいにする等、ケアを行う目的が明確です。このため、要介護者は「満足感」を、介護者は「達成感」が得られやすく、精神的な負担は比較的少ないかもしれません。

一方、要介護者の気持ちに寄り添い、受け止めることは、ある意味で非常に困難なケアです。話を聴くことも介護の一環ですが、どのように受け止め、どのような返答をするのか、明確な「正解」がありません。頑張っても、要介護者の方が望む通りに解決できない大きな課題に対しては、ただ黙って話を聴くことしかできません。

Aさんのお嫁さんのお話を聞いた時、Aさんに対する深い思いやりの気持ちを感じました。介護を単なる作業や役割としてではなく、相手の気持ちを尊重した「愛情のあるケア」として提供しようとしているからだと思います。しかし、悲観的な気持ちに引っ張られ、前向きに介護に取り組むことができない時もあると思います。人間なので、気持ちを一定に保ち続け、ずっと頑張り続けることは出来ません。

介護を受ける方、介護する方、どちらの気持ちも大切です。勤務する介護施設での業務はもちろん、今後、研究所の活動においても大きなテーマです。

先日、利用者さんから「タイサンボク」という珍しい花をいただきました。気品があって素敵な花です。とてもいい香りもします。
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