まよって当然

まよって当然

「食事が進まないし、活気もない。口数も少なくなってしまった。一人で外出することも難しくなってきた。これから、何をどうしたら良いのか分からない。」

 先日、以前から親しくしている方から突然の連絡がありました。「夫の様子が変わってしまい、困り果てている」との相談でした。私が介護施設に勤務していることをご存じで、連絡をくれたのだと思いますが、電話ではどんな言葉をかけてよいのか、私自身戸惑ってしまいました。「とにかく、直接、会って話をしよう!」と思い、ご自宅を訪問しました。しかし、実際にご夫婦に会って、私自身も途方に暮れてしまいました。数年前までの元気だった姿と現状とのギャップに戸惑ってしまったからです。

 彼女の夫は年始から体調を崩し、要支援1の認定を受け、週に1度のデイサービスの利用を開始されました。しかし、ここ1か月で、彼の活気がさらに低下し、デイサービスも休むことが多くなり、自宅内での移動や排泄、入浴にも援助が必要になってしまったとのことでした。この変化に、介護者の奥様は困惑していました。「このままではいけないことは分っているけれど、どう行動すればよいのか、何をすればよいのか、全くわからない」という彼女の言葉に、私も不安な気持ちになりました。

 今回、介護施設の職員としてではなく、「友人」として介護者となった方と話をする機会を持ちました。強く感じたのは、現状を冷静に受け止め、次の一手を考える事がとても難しいということです。大切な家族の一大事ですから当然です。病気やケガのように明確な治療方針があるわけでもなく、見通しを立てることが困難なため、大きな不安がつのります。

 介護施設の職員が介護者の方にお話をする場合、ケアを行う上での目標や方針、具体的な方法など、「判断や決断」を求めることが多くなりますが、直ぐに答えを出すことは難しく、迷って当然ということを、改めて実感しました。一度、決断しても、「本当にこれで良かったのか?」と自問自答し、振出しに戻ってしまうことも珍しくありません。

 この経験からいろいろと考えさせられました。今まで無意識に、自らの経験に基づいた「あたりまえ」を押し付けてしまっていたのではないだろうか。介護者の方々に「判断や決断」を求めるのではなく、「選択」を提供することを目指すべきかもしれないと考えました。私たち介護職員に出来ることは、複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット、デメリットをわかりやすく伝え、介護者の選択を全力でサポートすることだと思います。

 最後に、私たちの施設を利用しているある方のご主人から、ヒマワリの苗をいただきました。春に植えた苗がたくさん育ち、今では見事な花を咲かせています。

 夏本番ですね。

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